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由井に追い出されるようにマンションを出ると、路上に黒い高級車が停まっていた。
「お~い」
伊奈が運転手に手を振ると、すっと車は鈴蘭達の前に停車した。
ドアを開けようと出てくる運転手を手でいなし、伊奈はドアを開いて鈴蘭達を先に乗せた。
「類は今日うちに泊まればいいよね。とりあえず、星崎家に向かって」
運転手は小さく頷き車を発進させた。
「伊奈君ちってすごいの?」
未知に全く屈する様子もなかったし、由井は伊奈に敬意を払っているようだった。
鈴蘭はさくらぐみのなおちゃんである伊奈しか知らない。
「うち~?うーん…、すごいっていうか、まあ家格は九条よりは上だよねえ?類」
こてんと相馬の肩に頭を預け、伊奈は鈴蘭に微笑みかけた。
「まあそうなるかな?旧貴族の家だし官僚や大臣も多く輩出してるしなあ…。まあ、直己に国の未来を託すつもりは全くないが」
「あはは~!俺は類を婿にもらう予定だし!類が頑張ってオメガ初の総理大臣になってよね~」
伊奈が相馬の頬にキスすると、相馬は慣れっこなのか少し呆れたように微笑み返した。
「だから未知の事が怖くないんだね」
「は?怖い?」
伊奈はきょとんと目をぱちくりさせて鈴蘭を見た。
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