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「鈴ちゃんはさ、未知の何が怖いの?」 「え…」 未知の何が、どこが怖いか、そんなこと改めて考えたことなんてなかった。 確かに歯向かう者に容赦ない彼だが、今まではこんなに未知を恐れた事はなかったのに、いつの間にか鈴蘭は未知の機嫌を損なわないように躍起になっていたように思う。 本当にそれはいつの間にか、自分が意識する間もなくそういう構図が成り立っていた。 「鈴ちゃんは未知のこと、本当に友達だって思ってた?」 「え?思ってたよ…!」 「本当かなあ?未知に対して卑屈な気持ち、持ってなかった?」 「………」 同じオメガの性でありながらとびきりのカリスマ性を持つ未知のことを羨む気持ちはあった。 あんなふうに自分に自信が持てたらと、きっとそれは自分がオメガだと知ったその日から鈴蘭の心の中で育ち始めた感情だった。 「未知だって気がついてたはずだよ。鈴ちゃんがどういう気持ちで未知を見ていたか。未知はねそれに気づかないほど鈍感じゃない。逆にそういう他人の気持ちに敏感なんだ。羨まれたり恐れられたり萎縮されたり、そういう負の感情を受ければ受けるほど、未知は自分を特別だと勘違いしていく」 全てを見透かしたような伊奈の目に、鈴蘭は背中に冷たい汗を感じた。 未知を特別扱いすることが、まるで悪のように伊奈は言う。
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