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「匂い~?う~ん…、どんな匂いって言われても…いい匂い?」
「いい匂い…」
「そうそう。いい匂い。あのさあ、食虫植物ってあるじゃん。類の匂いってそんな感じなの。類の中に飛び込んでどろどろに溶かされちゃいたい、みたいな。俺、類の前だとただの羽虫になっちゃうんだ~」
「何だ、それ」
相馬は苦笑しつつ、纏わりつく伊奈の体を押し返した。
「初めて類に会った時はねえ、すごいオメガ臭いやつだなあって思ったんだ」
「オメガ臭い?」
鈴蘭からしたら相馬ほどオメガらしくないオメガはいないと思う。
いつもきっちり隙がなくてとても賢く、由井のような妖艶さの欠片もない。
もし相馬がアルファクラスに混じっていても全く違和感はないと思う。
「高校に上がる前に俺、こっちに戻ってきたんだけど、クラス分けの学力テストを受けさせられたんだよね。学校でも上位の成績の生徒だけを集めた特別なテストで、なぜかその教室に類がいたんだ」
「ああ。俺はオメガクラスだけど成績は学年でも上位だったからな。だから試験だけは受けるように学校から言われたんだ」
相馬と伊奈はその時を思い出したのか、二人だけで視線を絡ませ合った。
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