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教室のほとんどの生徒が赤いネクタイで、成績上位の生徒だけが集まっているわけだから、赤は優秀な性といわれるアルファクラスの生徒であるとすぐに理解した。
そして四、五人だけ紺色のネクタイをつけた生徒が混ざっているところを見ると、それが普通クラスの生徒であることもわかる。
普通クラスの生徒がアルファクラスに入るのは相当努力を必要とするらしく、紺のネクタイをした者は皆、昼食の時間だというのに復習に余念がない様子だった。
「なんでオメガが混ざってるんだよ。あいつがこの試験受けたって、アルファクラスに入れるわけがないのに。オメガはオメガらしくおとなしくしてればいいんだ」
彼は明らかにオメガという性を馬鹿にしたように呟いた。
「おいっ…!」
伊奈の隣の生徒がその言葉に反応した。
「オメガとかアルファとか、そんなの関係ないだろっ!」
アルファクラスにもこういう正義感あふれる者もいるのか、と伊奈は少し感心した。
そしてオメガの彼に視線を移すと、このいざこざが全く聞こえていないかのように、まっすぐに背筋を伸ばして前を見ていた。
しかし机の上で硬く握りしめられたこぶし。
それが一瞬小さく震えたように見えた瞬間、伊奈の中に怒りの感情が芽生えた。
それは、自分の大切な宝物が、土足でぐちゃぐちゃに踏みにじられたかのような怒りだった。
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