【2 座棺】

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 その時、突然チカチカと裸電球が点滅する。驚いて天井を見上げる私に、灯子は平然と言う。 「久しぶりに点けたものですから、電球が切れ掛かっているのかもしれませんね。入口の電気を点け直してみます」 「あ、いえ。もう出ますから」  だが断りを入れる私を無視するように、彼女は足早に傍らを通り過ぎて蔵の入口へと向かう。 「あ、あの……お気になさらずに」  部屋の中に一人残された私は、点滅する電球を見つめたまま居心地悪く立ち竦むしかなかった。  入口のスイッチを何度か切り替える彼女の後ろ姿を心細く見つめていた時、突然辺りが闇に包まれる。光を失った部屋の中は、すぐ目の前にある自分の手の輪郭すらも分からないほどの漆黒だった。  全く何も見えなくなった空間で、私は慌てて声を上げる。 「灯子さん!」  だが辺りは静まり返っていた。まるで闇が光だけでなく音すら飲み込んでしまったかのように、何の物音も聞こえなかった。
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