言えない本音

9/15
900人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
「あら、でも鳴海くんも絵麻ちゃんのこと褒めてたけどねぇ」 「え……」 鳴海さんが私を褒める? そんな事あるの? 「おい、そろそろ帰るぞ」 「あ……はい!じゃあおばさん、ご馳走さまでした!また来ますね」 2人で店を出て歩いていると、鳴海さんの携帯に電話がかかってきた。 ちらっと聞こえる会話の内容は、おそらく仕事の話。 数分後、険しい顔で電話を切る鳴海さん。 「……悪い、今から会社に行かなきゃいけなくなった」 「何かトラブルがあったんですか?」 「あぁ。取引先のデータのことでちょっとな。悪いな、送ってやれなくて」 いつもクールな鳴海さんだけど、ほんの少しだけ顔に申し訳ない気持ちが出ていて、つい笑ってしまった。 「何笑ってんだよ」 「だって……鳴海さんのそんな顔、初めて見ました」 もういつものクールな顔に戻っちゃったけど。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!