見えない敵意

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「でも鳴海さん、ちらっと見る限りでは全然何事もなかった顔してるし……それに、雪ちゃんが前に教えてくれた鳴海さんの噂も本当のことなんだって」 「でしょうね。あんないい男、女が放っておかないでしょ。私はタイプじゃないけど」 雪ちゃんは、クールな人はタイプじゃない。 男は優しくなきゃ男じゃないっていつも言ってる。 「じゃあキスした日から、一言も話してないわけ?」 「うん。……なるべく近づかないようにしようと思って」 「ねぇ、鳴海さんのキスってどんな感じ?」 「えっ……」 どんな感じなんて……一瞬のことだったけど、今でも鮮明に覚えている。 ただ触れただけなのに、熱かった。 強引だけど、優しいキスだった。 まるで鳴海さんの人柄を表しているような、そんなキス。 「うわ、絵麻やらし~!顔赤くして何思い出してるのよ」 「お、思い出してないもん!」 「でもさ、そのこと武川さんが知ったらどうなるんだろうね」 陽くんの名前を聞くと、胸に込み上げてくる罪悪感。 もしこのことを知られたら、私たちは終わってしまうのかな。
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