見えない敵意

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「私が動揺してるの見て、楽しんでるんですか……?」 「まぁ、正直、俺のせいでお前が動揺してるのを見るのはすげーいい気分だけど」 この人は、何がしたいの? どうして、私に近付くの? 「ふざけないで下さい。……どうしてキスなんてしたんですか?」 聞きたくなかったような、ずっと知りたかったような事。 ついに聞いてしまった。 「教えてほしい?」 「教えて下さい」 「電話では言いたくないな。お前の反応見れないとつまんねーし」 完全に、からかわれてる。 きっとこの人には、あのキスに意味なんてない。 そう思った。 「……もういいです」 そう言って、強引に電話を切った。 そして同時に、涙が零れた。 この涙が何の涙かなんて……わかってる。 「絵麻……」 「ごめん雪ちゃん……ちょっと今だけ泣いてもいいかな」 「いいわよ。いっぱい泣きなさい」 その日それきり鳴海さんから電話がかかってくることはなかった。 私は雪ちゃんの言葉に甘えて、人目も気にせずに泣いた。 こんなに泣いたのは、久し振りだった。
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