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陽くんもきっと、覚えている。
私も全部覚えている。
2年前、好きで好きで仕方なかったあのときの気持ちも。
毎日が幸せだと思っていたあの頃の2人も。
今の私は……どうしたいんだろう。
「伊咲ちゃん……伊咲ちゃん!」
「はいっ」
自分の名前が突然耳に入ってきて返事をしたら、すぐ傍に仙堂さんが来ていた。
「随分ぼーっとしてたけど大丈夫?何度も名前呼んでるのに携帯見たまま動かないからさー」
「すみません……」
全然気が付かなかった。
「待たせてごめんね。とりあえず行こうか」
カフェを出て2人で歩き始める。
仙堂さんは鳴海さんと違って、最初から私に歩く速度を合わせてくれた。
こんな些細なことで、無意識に鳴海さんを思い出してしまう。
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