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前に電話をかけたときは、僅か2コールで出た鳴海さん。
今回は、前よりも電話に出るのが早かった。
「もしもし……あの、伊咲です」
「知ってる」
私から電話をかけたくせに、沈黙になる。
何話したらいいんだっけ……。
「お前、今1人?」
「あ……はい1人です。今実家に帰ってて」
「あぁ、そういえば実家でパーティーするって言ってたな。……楽しめたか?」
「はい、凄く楽しかったです。女3人だと話が終わらなくて」
「うるさそう」
電話の奥で鳴海さんがふっと笑う。
その声を聞いただけで、一気に心に満ちる安心感。
その後は私から電話をかけたのにほとんど鳴海さんが話してくれた。
こんなに喋る鳴海さんは初めてだった。
きっと、私に気を使ってくれているのだろう。
鳴海さんは、陽くんのことは一切話に出さなかった。
敢えて陽くんの話題を避けてくれた。
鳴海さんは、そういう優しさをさり気なく出せる人。
そういう所を、私は密かに尊敬していた。
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