誕生日の夜

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「大丈夫だよ。ただ彼の浮気がわかって落ち込んでただけだから」 母に心配かけたくないから、わざと笑って言った。 家族に余計な心配はかけたくない。 「……そう。ならいいんだけど。絵麻は絵里と違って、昔から家族にも気使い過ぎるとこがあるから心配になっちゃって」 それは言えてるかもしれない。 いつでも奔放に言いたいことを言える絵里がうらやましかった。 私はどちらかというと自分の中に溜めてしまうタイプだから。 「ねぇ絵麻。あんたのことを心配してくれる人がいたら、その人のことをちゃんと頼りなさい。相手は、いつだって頼ってほしいはずよ。もっと甘え上手になりなさい」 私は昔から、人に甘えたり頼ったりするのが苦手だ。 それはなんでも自分で物事を解決したいからじゃなくて、相手にどう思われるかが怖いから。 そんな臆病な理由。 本当は迷惑だと思ってるんじゃないかとか、裏の裏まで探ってしまう。 嫌われたくないから、気を使う。 いつだって私は、心の底から誰かを自分以上に信じた事なんてないのかもしれない。
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