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ため息をつき、エレベーターの壁にもたれかかる。
あの警備のおっちゃんの言い方だと、本当に10分で直るのかも疑わしい。
あの女が指示通りに資料を持って来ていれば、こんな事に巻き込まれなかったのに。
そんな事を考えながらイライラしていたら、さっきまで俯いていた女が急に顔を上げ、俺を見つめて口を開いた。
「あの……すみません!私がボタンすごい勢いで連打したのが原因だと思うんです……仕事中なのに、巻き込んでしまって本当にすみません!」
その顔を見た瞬間、無意識で心臓が騒ぎ出した。
今まで経験したことのない感覚に驚き過ぎて、彼女から目が離せない。
「あの……」
彼女が何か俺に言いかけようとしたとき。
急に目の前が真っ暗になった。
「停電?」
ついに電気も落ちたか。
真っ暗な中で流れる沈黙。
耳を澄ますと、少し離れた位置にいる彼女が動揺している様子がわかった。
「……俺の腕、掴んでていいよ」
そう言って、彼女の隣に移動した。
思わず口走った言葉に後悔していると、彼女が震えた手で俺の右腕をぎゅっと掴んだ。
……また心臓が騒ぎ出す。
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