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……返す言葉が、見つからなかった。
「多分生きてたら、喜んでくれていたと思います。一応毎年命日に家族でお墓参り行くので、そのとき仕事の報告はしてるんですけど」
今にも泣きそうな笑顔で父親の話をする彼女。
「あ……でも結局異動になっちゃったんで、パソコンの仕事はしばらくお預けですけどね」
父親と同じ仕事に就きたいという目標を、壊してしまったのは俺。
正直に言おうか迷った。
俺が受付に推薦したんだと。
俺がお前のやりたかった仕事を奪ったんだと。
だけど、彼女の顔を見ていたら言えなかった。
狡いのは充分わかっている。
でも、嫌われたくない。
「なんかすみません。変な雰囲気になっちゃって……」
「いや全然。聞けてよかったよ」
「はいお待たせーこっちさばの味噌煮ね。はい、鳴海くんはいつものミックス」
そのときちょうどこの空気を変えるかのように、おばちゃんが定食を運んできてくれた。
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