触れた唇

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「伊咲ちゃんって誰の事ですか?」 隣にいた村瀬が、興味ありげに仙堂に聞く。 「そっか村瀬君知らないんだ。伊咲ちゃんは最近受付で研修やってた子だよ。わかる?」 「あぁ、あの子か。主任、やっぱりあの子の事狙ってたんですね」 村瀬のメガネの奥の目がニヤリと笑った。 つーか、関係ねーだろ。 俺が誰に興味持とうと。 「俺には彼氏いるからやめとけとか言ってたくせに」 本当に可愛げのない後輩だ。 絶対に昔の俺よりタチが悪い。 「でも俺も、あの子はタイプですよ。あのもう1人の受付の子は、綺麗過ぎてちょっと」 「えっそう?俺は断然伊咲ちゃんより雪ちゃんがタイプだな。あんな美人なかなかいないじゃん。クールなとこがまたいいんだよね」 そういえば、あれからアイツは、誰かに彼氏の事を相談したんだろうか。 結局何があったのかは、俺には言ってくれなかった。
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