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その日はいつもよりも仕事が早く終わり、営業部を出たのは午後9時前。
会社を出る前に、10階のシステム部へ立ち寄った。
彼女が今日から引き継ぎでシステム部に戻っている事は既にチェック済み。
まだ残っているかはわからないけど、システム部は仕事量が多いのに人が少なくて残業が多いと昔誰かに聞いた事がある。
10階に着き、初めてシステム部に足を踏み込むと、パソコンと睨み合っている彼女がいた。
しかも残っているのは彼女1人だけ。
俺はつくづく運があると思う。
受付でいつも笑っている彼女とは別の姿。
いつもの柔らかい雰囲気からは到底想像できないくらい、凄い早さでパソコンのキーボードを打っている彼女は新鮮だった。
しばらく遠くからその姿を目に焼き付けた後、背後から声をかけた。
「まだ仕事してんの?」
その言葉と同時に振り向いた彼女は、驚きの表情を浮かべていた。
多分俺がここに来るだなんて1ミリも考えていなかったんだろう。
だけど彼女のその素直な反応を見るのが、俺は案外好きだったりする。
いつ見ても飽きない、クルクルと変わる表情。
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