触れた唇

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「絵麻に何かあったことくらい私だってわかってます。……でも絵麻からは何も言ってこないから」 「じゃあお前から聞けよ」 お前って呼ぶなと言われてもこの女の本名を俺は知らない。 仙堂も彼女も、雪ちゃんとか呼んでたけど、死んでもそんな呼び方はしたくない。 「アイツが何も言ってこないならお前から聞いてやれよ。親友ってうわべだけか」 「失礼なこと言わないで!鳴海さんより私の方が絵麻のことわかってますから」 「確かにそうかもしれねぇな。でもだったら尚更、アイツが何かあったときに頼りたいのはお前しかいないんじゃねーの?……俺が聞いても、アイツは結局何も言わなかったから」 いつかアイツが1番に頼れるような存在になりたい。 そう本気で願っている。 だけど今は、この女の存在の方がアイツにとっては格段に上だ。 「鳴海さん、どうしてそんな事言いに来たんですか?まさか絵麻のこと……」 「アイツを助けてやりたいから」 ただそれだけ。 アイツのためにやれることがあるなら、それをやってやりたいだけ。
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