触れた唇

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翌日、残っていた仕事を済ませて東京へ戻った。 家に帰宅したのは18時過ぎ。 たった1泊の出張だけど、疲れた。 スーツを脱いで着替えようとしていたとき、テーブルに置いていた携帯が鳴った。 鳴ったのは仕事用じゃなく、プライベート用の携帯。 すぐに着信相手を確認すると、昨日からずっと思い浮かべていた彼女の名前。 名前を確認した瞬間、すぐに電話に出た。 「もしもし」 だけど電話の奥からはアイツの声は聞こえない。 まさか何かあったのか? 「おい、どうした?」 「あ、あの、伊咲ですけど……」 電話で聞く彼女の初めての声。 普段の声より、少しだけか細い。 「何かあったのか」 今まで何日もかかってくるのを待ち望んでいた電話。 何かあったに違いない。 「実は今、あの定食屋にいて……」 「は?」 定食屋?
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