触れた唇

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必死になってスピードを上げすぎたのか、15分くらいで会社に着いた。 あの定食屋には駐車場がないから、会社に車を止めて店まで歩いて向かう。 店に着き中に入ると、彼女はカウンターの席に1人で座っていてドアが開く音と共にこっちを見た。 「鳴海さん……早かったですね」 「偶然近くにいたから」 お前に早く会いたくて家から必死で車を飛ばしてきたなんて、そんなダセーこと絶対言えない。 多分俺には、女を喜ばすような甘い言葉なんて言えそうもない。 「出張だったんですよね……お疲れ様でした」 「なんで知ってんの?」 俺はコイツに出張だったなんて、一言も言ってない。 「昨日、仙堂さんが言ってたんで」 仙堂? アイツ俺がいない間にコイツに近付いて、何企んでんだよ。
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