触れた唇

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「今日は急に呼び出したのに来てくれてありがとうございました。1人で食べる食事より、楽しかったです」 ふわりと柔らかく微笑む彼女から、目が離せない。 こんな顔されたら、今すぐ抱きしめたくて仕方なくなる。 「じゃあ、仕事頑張って下さい。あ、そうだ……」 そう言って彼女が自分のバッグから取り出したものは、スティック状のケースに入ったチョコレート。 いかにも彼女が好きそうな、ストロベリー味。 「疲れてるときに食べるとほっとしますよ。私もよく食べるんですけど。あ、溶けてないので安心して食べて下さい」 今まで残業の時に甘いものなんて食べた事がない。 食べたいと思う事がなかった。 いつもは大体眠気が吹き飛ぶくらいの刺激の強いガムを食べる。 「普通ガムとかじゃねーの?眠気覚ましの刺激あるやつ」 「あ……すみませんガムは持ってなくて」 今食べたいのは、ガムなんかよりもっと刺激の強いもの。
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