781人が本棚に入れています
本棚に追加
「べ、別に何も……」
営業事務の佐藤は、この間データを紛失したときに俺がこっぴどく説教したからか、あれ以来やたらと俺に怯えている。
まぁその分、仕事は前よりも真剣に取り組むようにはなったけど。
「いいから言え。伊咲絵麻がなんだって?」
「え?あ、別に大した話じゃないんですけど……さっきお昼休憩のとき、トイレで会った女性にやたらと伊咲さんの事を聞かれたんです。どんな子なのかとかいろいろ……」
「それどんな女?外部のヤツか?」
「うちの社員じゃないと思いますけど。ショートカットでそれなりに美人な目立つ感じの人で……あと香水の香りがけっこう凄くて」
伊咲絵麻のことを探る外部の女。
誰がどう見ても怪しすぎる。
やっと1つ手掛かりが見つかった気がした。
すぐに自分のデスクへ行き、受付へ内線の電話をかける。
運良く電話の奥から聞こえた声は、飯嶋雪だった。
「はい、受付です」
「俺だ。営業の鳴海。今、隣にアイツは?」
「絵麻なら今休憩に行ってます。何かわかったんですか?」
「今日ショートカットの女、受付に来なかったか?外部の人間で」
外部の社員がうちの社内にいたなら、必ず受付を通っているはずだ。
最初のコメントを投稿しよう!