初めて見せた涙

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「べ、別に何も……」 営業事務の佐藤は、この間データを紛失したときに俺がこっぴどく説教したからか、あれ以来やたらと俺に怯えている。 まぁその分、仕事は前よりも真剣に取り組むようにはなったけど。 「いいから言え。伊咲絵麻がなんだって?」 「え?あ、別に大した話じゃないんですけど……さっきお昼休憩のとき、トイレで会った女性にやたらと伊咲さんの事を聞かれたんです。どんな子なのかとかいろいろ……」 「それどんな女?外部のヤツか?」 「うちの社員じゃないと思いますけど。ショートカットでそれなりに美人な目立つ感じの人で……あと香水の香りがけっこう凄くて」 伊咲絵麻のことを探る外部の女。 誰がどう見ても怪しすぎる。 やっと1つ手掛かりが見つかった気がした。 すぐに自分のデスクへ行き、受付へ内線の電話をかける。 運良く電話の奥から聞こえた声は、飯嶋雪だった。 「はい、受付です」 「俺だ。営業の鳴海。今、隣にアイツは?」 「絵麻なら今休憩に行ってます。何かわかったんですか?」 「今日ショートカットの女、受付に来なかったか?外部の人間で」 外部の社員がうちの社内にいたなら、必ず受付を通っているはずだ。
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