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彼女が最寄りの駅から歩いているかもしれないから、念の為駅の近くを通ってみたけれど彼女らしき姿は見えなかった。
タクシーで帰っていればもう家には着いている筈だし、電車で帰ったとしてもその途中どこにも寄らなければもう家に着いていてもいい筈だ。
不安が駆け巡る中、やっと視界に彼女の家が見えた。
「もうすぐ着く」
「へぇ、伊咲ちゃんちこの辺なんだ。なんか街灯少ないな」
彼女の住んでるアパートの前に車を停める。
確かアイツの部屋は2階。
上を見上げると、部屋のドアの前で彼女と彼女の背後に立つ人影が見えた。
……誰かいる。
そう思ったのと同時に、体は車から飛び出して2階へ階段を駆け上がった。
俺はほとんど無意識に、彼女の名前を叫んでいた。
「絵麻!」
彼女は今にも泣きそうな青白い顔をして、俺の顔を見た。
そして目が合った瞬間、確かに彼女は俺を見て安堵の表情を浮かべた。
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