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しばらくしてから泣き止んだ彼女は、俺から体を離し、泣き腫らした目でまっすぐに見つめてきた。
そして今にも消えそうな、細い声でお礼を言った。
「ありがとうございました……」
この数日間、彼女はどれだけ怖い思いをして過ごしてきたんだろう。
その恐怖はきっと、計り知れない。
初めて抱き締めた彼女の体は、思っていたよりも華奢で小さかった。
こんな細い体1つで、見えない敵に耐え抜くのは相当辛かっただろう。
抱き締めた瞬間、その体は壊れてしまうんじゃないかと思うくらい震えていたから。
「……無事でよかった」
このときばかりは、彼女と連絡が取れないことを教えてくれた飯嶋雪に心から感謝した。
「とりあえず行くか」
そう言って、強引に俺の家に来るように彼女を説得した。
こんな所に、彼女を1人で居させるわけにはいかない。
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