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「その顔やめろ。我慢できなくなるから」
信号が青になり、やっとの思いで彼女から視線を外してなんとか意識を運転に集中させた。
「お前、俺の家来てその顔したら襲うぞ」
「えっ……」
「冗談だよ」
あからさまに焦る顔に、思わず吹き出す。
まぁ、大して冗談でもないんだけど。
勿論こんな事態のあった日に、彼女に手を出すつもりなんて最初からない。
だけどいつだって、触れたいとは思ってる。
好きな女に、触りたくないわけがない。
「少し寝てろ。着いたら起こすから」
「……優しいんですね、鳴海さんって」
「は?俺はいつも優しいだろ」
彼女は少しだけ笑った。
その笑顔は、最近ずっと見せていた無理やり取り繕ったものなんかじゃなくて、俺の好きな笑顔だった。
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