初めて見せた涙

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隣で眠る彼女を乗せて車は家に着いた。 「おい、着いたぞ」 声をかけて少し揺らしてみるけど、全く起きる気配はない。 もしかしたら最近は、恐怖でろくに眠れていなかったのかもしれない。 彼女を起こさないように、そっと抱きかかえて家に入った。 それにしても、軽すぎる。 コイツちゃんと飯食ってるのか? とりあえず彼女を寝室のベッドに寝かせて、久し振りにキッチンに立つ。 料理なんて普段そんなにしないけど、一応一人暮らしが長いから大体のものは作れる。 けど、自分以外の誰かのために料理をするのは初めてだった。 適当に冷蔵庫に入ってるトマトや調味料を使ってソースを作り、パスタを茹でた。 アイツの好きな料理なんて一切知らないけど、女は大体パスタが好きな筈だ。 料理をしている途中、静かな空間に携帯の着信音が鳴り響いた。 仙堂からだ。
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