初めて見せた涙

20/23
前へ
/40ページ
次へ
「わざわざそんな事言って、一緒に寝てほしいの?」 「絶対寝ません」 そう言った彼女の声は予想外の冷たさで、明らかに怒っている気がした。 「なに怒ってんだよ」 「怒ってません」 「怒ってんだろ」 「怒ってません。ただ鳴海さんが私のことからかうから……」 からかう? からかってるつもりなんて、少しもない。 この想いをからかいなんかと一緒にすんな。 「勝手に勘違いすんな」 テーブル越しに絡み合う視線。 彼女のこの真っ直ぐな瞳は、いつも俺をおかしくする。 「あの日お前にキスした理由、知りたいって言ってたよな」 以前聞かれた時は、電話だから言いたくなかった。 きっとこういうことは、顔を見て言わないと意味がない。 「い、いいです言わなくて」 そう言って立ち上がり、俺の横を通り過ぎようとする彼女の腕を掴んだ。 「逃げんな」 逃げ道なんて、作らせない。 この想いを抑えるのは、もう無理だと思った。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

781人が本棚に入れています
本棚に追加