彼女の決断

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そのとき電話の奥で彼女が誰かと話している声が聞こえてきた。 「あ……鳴海さんすみません、お母さんがちょっと今部屋に来て」 「わかった。じゃあ月曜日に」 「はい、よろしくお願いします。おやすみなさい」 「おやすみ」 電話を切り、彼女の『おやすみなさい』を頭の中で何度も繰り返し思い出す。 今朝まで一緒にいたくせに、もう会いたくなっている自分がいて苦笑する。 資料の作成を途中でやめて、彼女の香りがまだ少し残るベッドに入った。 そういえば、誕生日はいつなんだろう。 来週が誕生日って言ってたけど、何曜日だ? さっき聞いておけばよかった。 来週の誕生日……彼女はやっぱり彼と過ごすんだろうか。 昨日でもう俺の想いは確実に彼女に伝わっているはずだ。 それでも彼と過ごすんだとしても、そう簡単に諦められる筈がないし、諦めるつもりもない。 今までの人生で、初めて本気で好きだと思った女だから。 一緒にいたいと願った女だから。
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