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「そういえばお前その荷物、今からまさか出張?」
「3日間名古屋にな」
「マジで?だからお前不機嫌な顔してたのか。そんなに伊咲ちゃんの顔見れないのが不満なわけ?変わったなホント」
そのとき総務部の女性社員が仙堂を呼ぶ声がした。
「悪いタケル、俺仕事戻るわ」
「あぁ。いろいろありがとな」
そのまま総務部を出て、正面玄関に向かう。
受付には笑顔で来客と対応する彼女の姿。
受付の前を通り過ぎるとき、彼女にこっちを見てほしくて視線を送った。
彼女は来客の対応中にも関わらず、俺の視線に気づいて会釈してくれた。
本当にこの笑顔が俺だけのモノになればいいのに。
なんて、もう何度願っただろう。
今ここでアイツと別れろと言ってやりたい。
本当なら強引にでも別れさせて自分のモノにしてしまいたい。
だけどそんな事をしたって、きっと彼女の心は手に入らない。
誰かの意見に流されるんじゃなく、彼女が自分で決断しないと意味がない。
俺は彼女から視線を外し、名古屋へ向かった。
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