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東京に着きすぐに自分の車に乗り換え、飯嶋に教えてもらったレストランへ急ぐ。
渋滞に巻き込まれ、着いたのは結局19時半過ぎ。
着く前に彼女の携帯に電話を何度かかけたけれど、何度かけても出る気配はなかった。
どうする。
このまま店に乗り込むか?
ここでじっと待っているだけじゃ、ここまで来た意味がない。
そして車を停めて外に出ようとしたときだった。
レストランから出てくる、1人の女性。
それは紛れもなく、俺が今から会いに行こうとしている彼女だった。
彼女は店を出て立ち止まり、人目を気にせずに泣き出した。
1人で泣くな。
泣くなら俺の前で泣け。
車のクラクションを鳴らすと、彼女は涙で濡れた目でこっちを見た。
「そんなとこで泣くな。早く乗れ」
彼女は濡れた目を拭きながら、俺の車に向かって歩いてきた。
涙でぐちゃぐちゃになって、化粧も取れた顔。
だけどそれを汚いだなんて思う筈がない。
この顔に、俺は一瞬で恋に落ちたから。
このとき思ったんだ。
彼女に恋人がいると知ったあのときに、諦めなくて良かったと。
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