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「……ありがとうございます」
いつから惹かれていたのかなんてわからないくらい。
この人はいつの間にか私の心に入ってきて、そして私の心を独占していた。
だけど私はこの想いに気付きたくなかったのかもしれない。
気付いてしまったら……もう後戻りはできないから。
「食わねーの?」
「……いただきます」
口にしたケーキは甘くて、だけど苺の甘酸っぱさもあって、私の凄く好きな味だった。
「鳴海さんは食べないんですか?」
「いらね。だって見るからに甘いだろ、それ」
ケーキを見ながら険しい表情を浮かべる鳴海さん。
自分の気持ちに気付いてしまったら、違う角度から彼を見たくなる。
何度でも、いろんな彼の表情を見たくなる。
……だけど、こんな事を考える私は、最低なのかもしれない。
ほんの数時間前に2年間付き合った彼と別れたばかりなのに。
あまりにも都合が良すぎる。
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