644人が本棚に入れています
本棚に追加
「他になんかないのかよ」
「えっと、じゃあ……」
誕生日っぽい食事といえば……。
「……フレンチ?」
「お前、今それテキトーに言っただろ」
「……言いました」
全部見透かされちゃう。
「まぁでも、フレンチか。ちょっと待ってろ」
そう言って鳴海さんは車を停めて、誰かに電話をかけだした。
すぐに電話は終わり、また車は発進する。
「店着く前に、化粧直せば?」
そう言われて顔を両手で勢いよく隠した。
そういえば私、酷い顔してたんだった。
「じゃあお言葉に甘えて……」
助手席に座りながら、化粧直しを始める。
でも、凄くやりづらい。
隣からの視線が、嫌ってほど気になってしまう。
「すみません本当に……こんな汚い顔、ずっと見せてしまって」
ミラーで見て再確認する。
目元は涙でマスカラが落ちて黒くなってるし、肌も濡れて酷い状態だ。
「お前は汚くなんかない。俺は、その顔もいいと思うけど」
鳴海さんの思いがけない言葉に、また心臓が、痛い。
最初のコメントを投稿しよう!