恋に落ちた日

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「他になんかないのかよ」 「えっと、じゃあ……」 誕生日っぽい食事といえば……。 「……フレンチ?」 「お前、今それテキトーに言っただろ」 「……言いました」 全部見透かされちゃう。 「まぁでも、フレンチか。ちょっと待ってろ」 そう言って鳴海さんは車を停めて、誰かに電話をかけだした。 すぐに電話は終わり、また車は発進する。 「店着く前に、化粧直せば?」 そう言われて顔を両手で勢いよく隠した。 そういえば私、酷い顔してたんだった。 「じゃあお言葉に甘えて……」 助手席に座りながら、化粧直しを始める。 でも、凄くやりづらい。 隣からの視線が、嫌ってほど気になってしまう。 「すみません本当に……こんな汚い顔、ずっと見せてしまって」 ミラーで見て再確認する。 目元は涙でマスカラが落ちて黒くなってるし、肌も濡れて酷い状態だ。 「お前は汚くなんかない。俺は、その顔もいいと思うけど」 鳴海さんの思いがけない言葉に、また心臓が、痛い。
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