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「悪かったな、急に席用意してほしいなんて言って」
「断れるわけないだろ。鳴海が頼み事してくるなんて滅多にないんだから。もしかして君が伊咲ちゃん?」
お店のオーナーさんは、私を見て優しく微笑んだ。
鳴海さんとどういう関係なのかわからないけれど、とりあえず慌てて挨拶した。
「初めまして伊咲絵麻といいます!鳴海さんの……部下です」
「仙堂から聞いてた通りの子だね。初めまして、鳴海の友人の白川です」
よろしくと言って差し出された手。
握手しようとすると、鳴海さんに無理やり遮られた。
「それより席案内して」
白川さんは一瞬驚いた表情を浮かべた後、クスクス笑いながら私達を席まで案内してくれた。
通された席は、少し小さな個室。
だけど外の景色が綺麗に見える、素敵な部屋。
「今日は満席だったから、この部屋は2人のために特別に用意したんだよ。どう?伊咲ちゃん気に入ってくれたかな」
「はい、凄く素敵です!ありがとうございます」
「良かった。じゃあ、どんどん食事運ぶから。ごゆっくり」
白川さんが出て行き、2人きりになる個室。
周りの雑音も聞こえてこない。
2人きりになった途端、心臓がまたドキドキし始めてくる。
どうやったって、意識してしまう。
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