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「あぁ、実はさ、ここだけの話なんだけど。タケルと香那ちゃん、大学のとき付き合ってたんだよね」
……やっぱり、そうなんだ。
「2年間くらいだったかな。でもほら、タケルって冷たいでしょ、誰に対しても。それで香那ちゃんが耐えられなくなって、タケルを振ったんだよね」
冷静に考えれば、わかっていた事なのに。
鳴海さんが私よりも恋愛の経験が豊富な事くらい、始めからわかっていた事なのに。
だけどやっぱり好きな人の過去の恋は、知りたくない。
それにあの人……少し話しただけだけど、凄く素敵な人だった。
あんな可愛くて性格も良さそうな人が、もし今でも鳴海さんのことを好きだったら……?
「絵麻。……絵麻っ」
耳元で雪ちゃんの大きな声が、突然耳に入ってきた。
「大丈夫?何ぼーっとしてんのよ。もう仙堂さん行っちゃったよ」
「えっ……」
私、相当ヤバいかもしれない。
「もう、落ち込むくらいなら早く好きだって言っちゃいなさいよ。あの元カノ、いい女だったしさすがの鳴海さんも揺れちゃうんじゃない?」
雪ちゃんがニヤリと不敵な笑みを浮かべながら言う。
「過去を知ってる女は手強いわよ」
その雪ちゃんの言葉が、仕事中もずっと頭から離れなかった。
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