664人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただそれだけの理由で電話しちゃいました。……ごめんなさい、楽しんでる途中に」
電話の奥からは何も聞こえてこない。
「あの、鳴海さん……?」
どうしよう、私今勢いで凄い事言っちゃった……?
絶対、迷惑だと思われてるに違いない。
「すみません!電話切りますね」
そこまで言うと、勢いよく私の言葉に鳴海さんの声が被さってきた。
「待てバカ、切るな。……今、外出たから」
「え……」
さっきまで聞こえていたお店の音や声は、何一つ聞こえてこない。
聞こえてくるのは、鳴海さんの低くて優しい声だけ。
「まだ当分帰れそうにはないけど。仙堂のバカが酔っ払って酷い事になってるから」
「どれだけ飲んだんですか、仙堂さん……」
「仙堂の事はどうでもいい。それよりお前……なんなの?マジで。……素直すぎるだろ」
そう言って鳴海さんは、電話の奥で深く溜め息をついた。
最初のコメントを投稿しよう!