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そのとき店員さんが、注文した料理を運んできてくれた。
「あっきたきた!食べよ、伊咲ちゃん!ここの生パスタ、凄く美味しいんだよ」
「……はい、いただきます」
さっきの真剣な表情とは真逆の柔らかい笑顔で、香那さんは何事もなかったようにその後も話しかけてくれた。
気が付けば香那さんの仕事の話や、私の仕事の話で盛り上がり時間はあっという間に過ぎていった。
鳴海さんの話は、あの後からは一度もしなかった。
私も、香那さんも。
香那さんと話していると、見たくなかった自分の醜い部分が見えてくる。
香那さんが凄く真っ直ぐな人だから。
反対に私の心は、ドロドロとした嫌な感情で覆われていく。
こんな自分、今まで知らなかった。
嫉妬なんて、今までの恋愛でも数えきれない程経験してきた筈なのに。
だけど今回の嫉妬は、今まで経験してきたものとはまるで違う気がした。
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