大きな動揺

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その人は、本当に突然私の目の前に現れた。 5月下旬の晴れた日の午後。 いつも通り、私と雪ちゃんは受付で来客の対応や電話応対に追われていた。 本当にいつもと何も変わらない日だった。 ……あの人が来るまでは。 お昼休憩から戻り午後の業務が始まる。 午後からの来客のアポイントの表をチェックしていたときだった。 「あの……」 1人の小柄で可愛らしい女性が私と雪ちゃんに声をかけてきた。 雪ちゃんがすぐに対応をする。 「あの、こちらに、鳴海タケルっていう人いますか……?」 思いがけず鳴海さんの名前が出てきて、顔が強張ってしまった。 「失礼ですが、お客様、本日来社のアポイントは取られていますでしょうか」 雪ちゃんが表情を変えずに、優しい口調でその女性に問いかける。 「いえ、約束はしていないんですけど……」 今までこんな風に鳴海さんを訪ねてくる人はいなかった。 何故か胸騒ぎがする。
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