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香那さんと思いがけず2人で食事をした日から数日が経った頃。
鳴海さんの仕事がやっと落ち着いてきた。
雪ちゃんの話によると、営業部が総力をあげた結果、狙っていた大口の取引先が無事に決まったみたい。
最近は受付で鳴海さんの顔を見れる時間も少なかった。
たまに見れたときは、少し疲れた顔をしていた。
ちゃんと睡眠取れているのかなとか、栄養のある食事は食べているのかなとかいつも気になっていた。
だけど仕事の邪魔は絶対にしたくないから、連絡は控えていたんだ。
でももう落ち着いたなら、夜、食事に誘ってみようかな。
別に食事じゃなくたっていい。
ただ、鳴海さんと話したいだけ。
一緒の時間を、過ごしたいだけ。
そう仕事をしながら考えていたとき。
ちょうど外から、鳴海さんが会社に入ってくるのが見えた。
受付の前を通るとき、鳴海さんは必ずこちらに視線を送る。
今日もそれは変わることなく、一瞬目が合った。
……今しかない。
「あの、鳴海さん」
周りに気付かれないようにコソッと声をかけると、鳴海さんは私の方に近付いてきてくれた。
久し振りに、至近距離で見る鳴海さん。
どうやったって、ドキドキしてしまう。
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