誰にも譲れない恋

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「あの、今日の夜って空いてますか……?」 「今日?……悪い、今日はちょっと」 「あ……わかりました」 用事があるなら仕方ない。 それよりも、今日は鳴海さんの顔色が良さそうでほっとした。 「なんだよ、今日なんかあんの?」 「え……」 何かあるのかって聞かれても、何も特別なことなんてない。 ただ一緒にいたかったんです……なんて、こんな所で言えるはずない。 「……いえ、何でもないんです。気にしないで下さい」 「気にすんなって言われても、気になるんだけど」 意外と食いついてくる鳴海さん。 「あの、本当に何でもないんです!仕事中に呼び止めちゃってすみません」 「絵麻、お客様来たわよ」 そのとき隣から雪ちゃんに声をかけられて、鳴海さんとの会話を中断し業務に戻った。 お客様の対応をしながら、横目でちらっとエレベーターに向かう鳴海さんの後ろ姿を見つめる。 また今度、食事に誘ってみよう。 このときは、そう軽く考えてたんだ。
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