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走って、走って。
息があがるのも忘れるくらい、とにかくひたすら走った。
やっと目的の場所に辿り着いた。
駅の近くのBar『Berry’s』
ここに今、2人はいる。
ドアの前であがった息を整えて、ゆっくりと扉を開いた。
ここの店内に入るのは初めて。
前からここにお店があるのは知っていたけれど、自分には場違いな気がして来た事はなかった。
一歩ずつ奥に進んでいくと、すぐに見つけた。
カウンターに座る彼の後ろ姿。
そしてその隣には、鳴海さんを見つめながら笑顔で話しかける香那さんの姿。
嫌だ。
これ以上近付かないで。
「鳴海さん!」
思わず後ろから、彼の名前を叫んだ。
すると2人は、一斉に後ろを振り向いた。
「お前、なんでここに……」
「ごめんなさい!こんな所まで来て……でも嫌なんです……鳴海さん、他の女性を好きにならないで下さい……!」
そう言いながら、目に涙が溜まっていくのがわかる。
だけどその涙が零れるのを必死で堪えながら、2人を見つめた。
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