大切な家族

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「行きましょうか、鳴海さん」 そう言ってまたあの顔で無理をして笑い、駐車場へと歩いて行く。 ……そんな顔、すんな。 「絵麻」 名前を呼ぶと、素直に俺の方を振り向く。 俺はコイツに、そんな顔はさせない。 「安心しろ。俺はお前を置いていなくなったりしない」 その瞬間、本当にまるでスローモーションのように。 彼女の瞳からゆっくりと一粒の涙が零れた。 「……でもそんなの、わからないじゃないですか……だって、お父さんだって……」 「約束する。だから、父親の話をするとき、もう泣きそうな顔すんな。そんな顔するくらいなら、俺の前で泣けばいい」 彼女は綺麗な涙を流しながら、俺の体に抱きついてきた。 「……約束、破ったら怒りますからね」 「必ず守るよ」 彼女を好きになったあの日からもう何ヶ月か経ったけれど、今日初めて、やっと彼女の心の奥に触れた気がした。
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