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雪ちゃんの言葉に、私と鳴海さんの視線が絡み合う。
「あの、ごめんなさい、私……」
「悪かった」
2人の声がちょうど重なったけれど、彼の言葉は私にはしっかりと聞こえてきた。
「え?」
「あの女のこと、お前には関係ないなんて言って悪かった。……普通、気になるよな。目の前であんな事言われたら」
鳴海さんの、私を見る瞳は優しかった。
「ごめんなさい……私も急に帰っちゃったりして。あのときは何か鳴海さんと一緒にいるのが嫌な気持ちになっちゃって……」
「随分正直だな」
「ごめんなさい……」
鳴海さんが体だけの女性なんていちいち覚えていないって言ったとき。
一瞬、頭の中で思ってしまったんだ。
自分も、いつかこんな風に言われるときが来るんじゃないかって。
身体を重ねた相手を覚えていないだなんて、私には理解できない。
鳴海さんは、私の家族にも会ってくれたくらい、私のことを大切にしてくれているのに。
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