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翌朝。
一緒に出勤してもよかったけど、彼女が嫌がるから俺は車で、彼女は電車で別々に出勤した。
営業部に入ると、一斉に俺に視線が向く。
そのとき奥から慌てた様子で、加藤が飛び込んできた。
「主任!申し訳ありませんでした!俺、伊咲さんが主任の彼女だって本当に知らなくてつい……」
「その事はもういい。それより早く仕事に取りかかれ」
正直まだ腹立つけど、仕事とプライベートは別だ。
「けど主任に好感持てましたよ、俺達」
「確かに!主任って俺達には手の届かなそうな美人にしか興味ないと思ってましたもん。見る目ありますよね」
「あの子可愛いし性格良さそうだし、主任が選んだ子があの子で良かったですよ」
思っていたよりも、意外といい反応だった。
まぁ、男の噂なんてどうでもいい。
それよりもこういう噂は、女の方が数倍タチが悪い。
「おはようございます主任。そういえば主任、あの社員旅行で秘書課の子と何かあったんですか?」
村瀬の言葉で、あの女の事を思い出す。
もう顔も正直覚えてねーけど。
「あぁ、ちょっとな。どうした?」
「何かあの子、主任の悪い噂相当広めてるらしいですよ。社員旅行でヤリ逃げされたとか。かなり恨まれてるみたいですね」
「ヤリ逃げって……」
本当にあり得ないくらいバカな女だ。
怒る気さえ失せてしまう。
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