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けど恨みの矛先が彼女じゃなくて、俺に向いてくれて良かった。
俺はどんな噂をされても構わない。
でも彼女は違う。
俺の前では平気なふりをしながら、裏で1人で傷付くタイプだ。
「言いたいだけ言わせておけ」
「でも伊咲さんにはちゃんとフォローしておいた方がいいんじゃないですか?あの子何でも信じそうだし……」
「大丈夫だよ」
なんて言ったものの。
やっぱり気になり、外回りを終えた後受付に立ち寄った。
「鳴海さん……どうしたんですか?」
「ちょっと気になったから。……大丈夫か?」
「あ、私は大丈夫です!鳴海さんの方は……?」
「そういえばさっき、休憩のときに変な噂聞いたんですけど。鳴海さんがあの秘書課の子と絵麻で二股かけてるとか」
彼女と話していたはずなのに、隣から飯嶋が楽しそうに割り込んできた。
半分呆れながらそんなわけねぇだろと言おうとした瞬間、俺よりも先に彼女が口を開いた。
「噂なんかに惑わされちゃダメだよ、雪ちゃん」
「……あんたにそんな事言われる日がくると思わなかったわ」
そのやりとりに思わず吹き出してしまった。
噂なんて、すぐに消える。
俺と彼女は強く繋がっているから、何があっても大丈夫だ。
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