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「あれ、伊咲ちゃんは?」
「アイツなら今帰った」
「帰っちゃったんだ。けどさーお前、伊咲ちゃんといると別人みたいだよなホント。どんだけハマってるわけ?」
「私も思った!鳴海くん、伊咲ちゃんといるときいつもあんな優しい顔してるんだね」
仙堂と香那がニヤニヤ楽しそうに俺をからかう。
「でも、伊咲ちゃん今日綺麗だったね。お化粧もいつもと少し違ったし。きっと鳴海くんに見せたかったのかもね、綺麗に着飾った自分を」
その香那の言葉で、ついさっき別れたばかりの彼女の姿を思い浮かべる。
いつもとは雰囲気が違った彼女。
きっと今日のアイツは、今日しか見れない。
綺麗だって一言、言ってやれば良かった。
立ち止まり、もう一度さっきの別れ際のアイツの笑った顔を思い出す。
「……ヤバいな、俺」
「どうしたの?鳴海くん」
思い出せば思い出すほど、会いたくて仕方なくなる。
「香那悪い。俺、帰るわ」
「えっタケル帰るの?今日は朝まで遥輝と香那ちゃんのお祝いするんじゃないの?」
「また今度埋め合わせする。白川にも言っておいて」
「鳴海くん、走ればきっと追いつくよ。伊咲ちゃん歩くの遅いから」
「わかってる」
そう言い残し、走って彼女を追いかけた。
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