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少し走ると、ちょうど道路沿いでタクシーを拾おうとする彼女が見えた。
「絵麻!」
息を切らし、彼女の名前を呼ぶ。
すると彼女は驚きの表情を浮かべて俺の方に駆け寄ってきた。
「鳴海さん、どうしたんですか?あ、もしかして私忘れ物……」
「アホか。忘れ物じゃねーよ」
彼女が俺の目の前に立った瞬間、きつく抱きしめた。
「え……鳴海さん?」
通りすがりの奴らの視線を痛いほど感じる。
けど正直そんなの、どうでもよかった。
「あの、鳴海さん!周りの視線が……」
そう言われて彼女の顔を覗き込むと、予想通りの真っ赤な顔。
その表情に1人満足して顔が緩む。
「どうしたんですか?三次会は?」
「行かない。お前と一緒に今日は帰る」
「私なら大丈夫ですよ!1人で帰れますから……」
「そうじゃなくて」
焦り出す彼女から体を離し、彼女の小さな右手を握りしめた。
「今日はお前といたいんだよ」
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