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「俺も思ってるよ。……お前を見つけたあの日から、ずっと」
そして彼女の柔らかい唇にキスをしようと、頬に手を伸ばした瞬間。
間一髪で、運転手のおっちゃんの存在を思い出した。
見ると、バックミラー越しにニヤニヤしてるおっちゃん。
「いいよ、兄ちゃん。俺のことは気にしなくていいからさ」
彼女の頬に伸ばした手を元に戻した。
危ない、マジで。
もう少しでこのおっちゃんの前で完全に濃厚なキスをするところだった。
「お前、こんな所でそういう事言うなバカ」
「だ、だって鳴海さんが今すぐ言えって急かしたんじゃないですか……」
確かにそうだけど。
「いいね~若いって。俺の若い頃もね……」
なんて、急におっちゃんの若い頃の武勇伝を聞かされる始末。
俺はもちろん殆ど聞かずに流していたけど、隣の彼女は真剣に聞き入っていた。
しかも、おっちゃんがすげー喜びそうなリアクションしてるし。
その変な光景に、思わずふっと笑ってしまう。
そしてやっとタクシーは目的のホテルの前に着いた。
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