近い将来

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タクシー代を支払い、彼女を先に降ろさせようとすると、武勇伝を聞いてもらえて満足したおっちゃんが声をかけてきた。 「兄ちゃん、今日は熱い夜になるだろうけどあんまり彼女に無理させるんじゃないよ~」 ……余計なお世話だよ。 「お姉ちゃん、ありがとうね。久し振りにこんなおじさんの話をちゃんと聞いてくれるお客さんに出会えて今日は嬉しかったよ」 「こちらこそ……楽しいお話ありがとうございました!」 「早く降りろ」 「はい……じゃあおじさん、お仕事頑張って下さいね」 彼女を無理やり降ろさせて、タクシーは去って行った。 「お前、なに途中からおっちゃんと仲良くなってんだよ」 「でも話したらいいおじさんでしたよ」 俺にはスケベなオヤジにしか見えなかったけど。 「それに、あれくらいの年代の人と会話するの結構好きなんです。お父さんを思い出せるので」 「お前の親父はあんなんじゃねーだろ」 「確かに違いますけど」 そんな会話をしながら彼女の手を握りしめ、ホテルに向かう。 彼女の片手には、香那にもらった白いブーケがしっかりと握られていた。
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