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そもそも社員旅行なんて、全く行く気はなかったけど、彼女が行く事は大体予想できていた。
だけど、会社で営業部の休憩室に入ろうとしたとき。
中から彼女の名前が聞こえてきた。
「最近さ、受付の伊咲さん綺麗になったと思わない?」
「あっ俺も思った!つーか今まで飯嶋雪みたいな美人の横にいるから気が付かなかったけど、あの子も可愛いよな」
ドアノブを握る手に、思わず力が入る。
「同期の奴に聞いたんだけど、伊咲さん彼氏と別れたらしいんだよな。俺、社員旅行のとき声かけてみようと思ってさ」
は?
ふざけんなよ。
「しかもあの子さ、よく見ると意外といい体してんだよね。あの子抱けたら最高だろうな……」
その言葉を聞いた瞬間、勢いよく休憩室のドアを開けた。
「あ、主任お疲れさまです」
今アイツの事を言っていたのは加藤か。
加藤は仕事ぶりも積極的で、営業ではトークもうまい方だ。
……危なすぎるだろ。
それで俺も社員旅行に急遽参加する事にしたけど、実際マジで行ってよかった。
ギリギリ最悪の事態は防げたから。
にしても、ホントに。
警戒心が薄すぎるし、無防備にも程がある。
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