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今年のクリスマスイブは普通の平日で、私は通常通り18時に業務は終わったけれど、忙しい営業部所属の鳴海さんはその日も定時には終わらなかった。
しかもその日は、取引先の幹部の方々との会食に鳴海さんも呼ばれてしまっていた。
「悪い、今日会うの無理かも。かなり遅くなる」
先に家に帰宅していた私に掛かってきた電話。
本当は凄く会いたかったけど、仕方ないよね。
大事な仕事だもん。
「わかりました。仕事、頑張って下さいね」
重い女だと思われたくないから、敢えて明るく振る舞った。
それに、今年がダメでも来年だってある。
来年のクリスマスイブ、鳴海さんと2人で過ごせたらそれでいい。
鳴海さんとの電話を切り、冷蔵庫からビールを出す。
そのとき、ビールの奥にあるケーキが目に入った。
少し小さめの、甘さ控えめの生クリームを使ったホールケーキ。
甘いものが苦手な鳴海さんと一緒に食べたくて、昨日の夜中に作ったケーキ。
……これ、1人で食べたら太るかな。
とりあえずケーキは後で食べることにして、ビールだけ冷蔵庫から出して飲み始めた。
イブに1人で家飲み。
寂しいだなんて、頑張ってる鳴海さんに言いたくないけど。
……やっぱり、少し、寂しい。
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