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「ありがとう。大事に使うよ」
鳴海さんは、すぐに付けていた腕時計を外して私がプレゼントした時計を付けてくれた。
「あと、ケーキ!実は用意してるんです!今持ってきますね」
キッチンへ行き、冷蔵庫から夜中作ったケーキを出してコーヒーメーカーをセットする。
「それ、お前が作ったの?」
気が付いたら鳴海さんもキッチンまで来ていた。
この狭い空間に一緒にいるだけで、ドキドキしてしまう。
「はい、せっかくのクリスマスだし鳴海さんと一緒に食べようと思って。あ、でも甘さは控えめにしてるんで」
「へぇ……旨そうじゃん」
そう言って鳴海さんは、その綺麗な長い指でケーキの生クリームの部分を掬い、私の口の前に差し出してきた。
「え、あの……」
「先にお前が味見して。……本当に甘くないか」
私の目の前には、余裕の笑みを浮かべるSな彼。
出た、鳴海さんの意地悪モード。
「だ、大丈夫です!ちゃんと作ってるとき味見したんで」
「いいから早く」
わかってる。
鳴海さんが恥ずかしがる私を面白がってる事くらい。
仕方なく彼の指にある生クリームを口の中に入れたその瞬間。
一瞬で身体中が熱くなった気がした。
自分の舌に、彼の指先が触れる。
ただそれだけの事なのに。
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