701人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうぞ、あがってあがって。今日はね、タケルが彼女連れて来るっていうから私もお兄ちゃんも楽しみにしてたの」
「兄貴も来てんのかよ」
リビングに通されると、鳴海さんのお母さんらしき女性が台所からパタパタと駆け寄ってきた。
「あなたが絵麻ちゃんね、ずっと会いたかったのよ!今日は来てくれてありがとう」
そう言って突然抱きしめられた。
予想外の展開に、動けない私。
しかも、結構力が強くて苦しい……。
「勝手に抱きつくな」
鳴海さんが無理やり引き離してくれて、少し助かった。
「あら、ごめんね絵麻ちゃん!私、本当にタケルが絵麻ちゃんを連れて来てくれたのが嬉しくて」
「こちらこそ……お会いできて嬉しいです!」
屈託なく笑うお母さん。
鳴海さんとは正反対で、よく笑いよく喋る。
本当に、明るい人。
でもやっぱり笑った顔が、どことなく鳴海さんと似ていると思った。
「お父さんもちゃんと絵麻ちゃんに挨拶して!」
お母さんにそう言われて、リビングのソファーに座りながら新聞を読んでいたお父さんが私の方をちらりと見た。
「あの、初めまして伊咲絵麻といいます……」
「……うるさいけど、ゆっくりしていきなさい」
一言そう言って、また新聞を読むお父さん。
もしかして私、嫌われた……?
最初のコメントを投稿しよう!